厚生大臣 宮下 創平殿

高知赤十字病院における
脳死患者からの臓器摘出に関する
抗議と公開質問状


 臓器の移植に関する法律制定時には、次のような付帯決議が採択されている。

「臓器摘出に係る法律第5条第2項の判定については、脳低温療法を含めあらゆる 医療を施した後に行われるものであって、判定が臓器確保のために安易に行われる との不審を生じないよう医療不信の解消及び医療倫理の確立に努めること。」
 
従って厚生省には今回、高知赤十字病院で2月28日脳死から臓器を摘出され、結果死亡させられた女性患者につき、病院が救命治療を施したのかどうか調査・検証し、情報開示する義務があると考える。
 私たちは、臓器移植が優先され救命がおろそかにされ、患者の救命治療を受ける権利が侵害されていると考え、この一連の行為を容認・指導してきた厚生省に強く抗議し、以下につき質問する。

@病院は患者の病名をクモ膜下出血と診断したことを公表している。ク モ膜下出血に対して、脳低温療法による数多くの回復症例が日本大学板橋病院の林成之医師により学会で発表されている。病院では、脳低温療法が過去に実施されていたか否か、実施されていればその実績を示すこと。

A今回の患者に対して脳低温療法の適応があったか否か、ないとすればその根拠を示せ。

B病院は2月23日に移植コーディネーター2名を呼び家族と接触させ、臓器摘出の説明をさせているが、この段階で主治医は「臨床的脳死」と診断したのか、そうだとすれば、「臨床的脳死」と診断した時間とその根拠を示すこと。さらに実施した検査項目とその数値を明示せよ。

C主治医は、家族にコーディネーターを会わせるまでに患者に対してどのような救命治療を施したのか、治療内容を時系列的に示せ。

D主治医が「臨床的脳死」を確認するに至った検査データを第1回目、第2回目共に検査項目毎にその内容を時系列に示せ。

E新聞報道によれば、主治医は2月25日午後に第2回目の臨床的脳死診断をしている。  第1回目・第2回目の臨床的脳死診断はいずれも家族の承諾書を得ているか、その際 誰が立ち会ったか明らかにせよ。

F無呼吸テストの実施は脳死に近い状態の患者を決定的に脳死にしてしまう。従って、 臨床的脳死診断においても無呼吸テストは他の検査が全て終わった後、治療上必要なときだけ認められている。
新聞報道によれば、今回脳波が平坦でない状態であえて無呼吸テストを2回実施して主治医が臨床的脳死を確認しているが、なぜ救命治療に反する無呼吸テストを2回も実施したのか、その根拠を示せ。
更に、どのようなモニターを配置しながら人工呼吸器は各々何分停止したのかを明らかにせよ。併せてその時その時の動脈血中酸素分圧(PaO2)の数値、及び動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)の数値を示せ。
また右分圧は、連続血ガス分析装置を使用したか否か、使用していたならば当該ガス分析装置による記録と共に、全ての数値を時系列的に示せ。

G上記無呼吸テストは脳波検査の前後いずれにおいて実施したかをあらためて明示せよ。
 また厚生省脳死判定基準では脳波計レンジは50μV/20oとされているが、右脳波検査の際のレンジを明示せよ。

H臓器移植法に基づき任命された脳死判定医が、2月25日20時13分より法に基づいた脳死判定作業に入っているが、その際脳波が平坦でない状態を確認しながら人工呼吸器を止める無呼吸テストを実施している。これは明らかに臓器移植法・厚生省令第2条3項に違反する行為である。
判定医は何故このような違法行為を行ったのか理由を明らかにせよ。

I脳死判定医が実施した上記脳死判定時の全ての検査数値を時系列に示せ。またその際脳波計レンジをどのように設定していたか、及び連続血ガス分析装置を使用したか否かも明らかにせよ。

 今回、高知赤十字病院の一連の行為は多くの人に不信を抱かせた。
早すぎると断ぜざるを得ない脳死宣告。臨床的脳死診断時に脳波が平坦でない状況において無呼吸テストを実施したという暴挙。そして何よりもおろそかにされた救命治療。

これらは全て昨年6月厚生省が臓器提供病院を一挙にかつ一方的に拡大した結果であり、その責任は重大である。

加えて、2月26日以降は一変して患者のプライバシー保護を理由に、脳死判定や臓器摘出に関わる事実を非公開とすることを指導した。これは国民の「知る権利」の侵害であり、報道統制にもつながりかねない。
ドナー患者の治療の保証、さらには国民にとっての開かれた医療の保証に関して、厚生省の責任の所在を示せ。
 
なお、本公開質問状に対しては、下記「脳死」臓器移植による人権侵害監視委員会・東京の事務局宛、文章によりご回答されたい。

平成11年3月4日 
「脳死」臓器移植による人権侵害監視委員会・東京(代表・綱川英治)
事務局/ 東京都中央区銀座1ー4ー3 第6工業ビル2階
有楽橋法律事務所内  TEL:30(3561)7660番
「脳死」臓器移植による人権侵害監視委員会・大阪(代表・岡本隆吉)
事務所/ 大阪市北区西天満4ー3ー3 星光ビル2階
     冠木克彦法律事務所内  TEL:06(6315)1517番
脳死・臓器移植を考える委員会(代表・阿部知子/松本文六)
医療を考える会(代表・山本 歩)
全国交通事故遺族の会(会長・井手 渉)
日本消費者連盟(運営委員長・富山洋子)
宗教法人「大本」(代表役員・植村 彰)
脳死・臓器移植に反対する関西市民の会(代表・岡本 隆吉)
ナゴヤNO脳死(代表・五島 幸明)

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