判決と異なる事実を勝手に作り上げて
違法行為をそそのかす
日本移植学会理事長声明に抗議する。
一、常軌を逸した声明
日本移植学会は1998年5月28日理事長声明をもって、同年5月20日言い渡された関西医科大学事件判決(平成六年(ワ)第九一六一号事件)を読まないで書かれていると思えるほどひどい事実誤認をしており、同学会所属医師の名誉と信用を傷つけるとともに、国民に誤った情報を提供して混乱させるものであり、同学会の責任においてすみやかに訂正すべきことを求めるとともに、違法行為をそそのかす意図がうかがわれることに強く抗議するものである。
二、説明も同意もないから当然に違法である。
右判決がカテーテル挿入行為に関して認定した事実は、患者の家族の誰に対しても「説明し」「承諾を得たことは、本件全証拠によってもこれを認めるに足りない」という事実であり、関西医科大学事件では、生存中に移植のためのカテーテルを挿入することについて、患者家族の誰の承諾もなしになされたものであり、違法性を阻却することはできないという当然の判断をしたものである。
一方「声明」は、「ドナー家族の承諾は脳死状態におけるドナーに対する臓器提供を目的とした医療行為を法的に正当化しうると考える。勿論、家族の承諾は上記の説明を十分に受けた後に行われるものでなければならないことはいうまでもない」と述べており、判決もこの「説明も承諾もない」から違法と認定しているのであるから、「声明」は判決文のどこを読んで噛みついているのかわけがわからなくなっている。
なお、血管摘出について判決は「被告が指示した証拠がない」と認定しているのであるから、さらに立証すれば被告の責任が認められるのに、「声明」は合法であると虚偽宣伝をしている。
三、生存中の治療目的外の侵襲行為は違法である。
治療目的外の侵襲行為は当然に違法であるが、その違法性が阻却される場合があることを判決は述べており、阻却要因として「説明と承諾」を一つの要素として判決は検討し、この阻却要因もないので違法は明らかとしている。あたり前の当然のことを判決が述べているのに対し、批判するとは違法行為を学会がそそのかすことであり、強く抗議するものである。
また、「声明」は本件事件の患者をして「脳死状態」と述べているが、本件患者がカテーテルを挿入された当時「生存中」であることに争いはなく、脳死判定で「脳死ではなという判断もその以前になされ、どの時点においても脳死判定によって脳死と確認された事実は一切存在しない。この点も判決を読まずして、あるいは、読んでも司法判断を無視して自らの独断を押しつけて本件患者を脳死状態と勝手に決めつけるほど常軌を逸した声明である。
移植学会は1997年4月12日に移植マニュアル(「臓器移植ネットワーク行動指針」)を改訂し、従前使用されていた「脳死状態」というまぎらわしい用語を廃して「二回目の脳死判定が行われた後の状態」を「脳死」と述べ、以前の「脳死状態」も同義である旨を当監視委員会に回答している。
したがって、「脳死状態」と移植学会が述べるのは厚生省基準による二回目の脳死判定がなされた後の状態をいうが、本件では一切かかる事実はない。
本件患者はカテーテル挿入当時生存中であることに争いはなく、脳死でなかったことも争いはない。
「声明」は勝手に作り上げた事実を前提として判決を批判し、司法判断に真に耳をかたむけようともせずにあくまでも自己の判断のみを社会に押しつけ、医療不信を自ら作りあげていることを自覚すべきである。
四、医療不信を自ら醸成している。
以上詳しく述べたように、大阪地裁判決は法秩序において余りにも当然の判決をなしたものであり、これを移植学会ともあろう団体が批判するということは自ら違法行為を行うという宣言をしているようなものであって、国民の医療不信、とりわけ臓器移植に対する疑惑ともいうべき不信は倍加されることは必定であり、その責任はあげて移植学会にあるこことを、ここに声明する。
脳死・臓器移植による人権侵害監視委員会・大阪
代表者 岡 本 隆 吉
事務局 冠 木 克 彦
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